逃走

"彼"は愛車のフュラーリに乗り込むと、
一気に加速させた。

事務所の机に一日中しがみついているワケにもいかず、
他のヤマの現場にも行かなくてはならない。


捜査には
『現場百回』という言葉があるが、
全くそのとおりだと
"彼"も思っていた。


最近の若い連中は、
やれプロファイリングだ、
やれ状況分析だと、
楽をするコトしか考えていない。

足を使ってこそ
ホシを捕らえられるというのに。

・・・しかし"彼"は
捜査もしなければ、
(工事)現場にも
十回も行かないが・・・。


そうすっかり探偵気分に浸っていると、
いつの間にか現場に着いていた。


まだ熱をもつフュラーリ -- 世間一般ではママチャリと呼ばれる --
から颯爽と降り立ち、
少しばかり冷た過ぎる風の中、
現場を見渡す。

「問題ナッシング。」

そう、
最初からなんの問題もない。
暖房に当たり過ぎで鈍ったアタマと
強ばったカラダをスッキリさせたかったのだ。


・・・つまり現実逃避・・・。


期待していたようなイベントもなく、
オマケに後悔する程寒くなってきたので、
事務所に帰るコトにする。


・・・
・・・街は、
明け方の娼婦のようにくたびれた表情をしていた。


誰もがクリスマスと暮れの狂乱に挟まれた
ホンの少しの『睡眠時間』を貪っている。


"彼"は大袈裟な身振りでコートの襟を立てると、
まるで朝日を避けるかのように
背を丸めて歩き出すのだった・・・。



・・・ところで"彼"は
明け方に娼婦に遇ったコトなどない・・・。

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