焦燥

・・・!・・・!・・・

また電話がなっている。

まったく、
どいつもこいつも仕事熱心過ぎる。

年内も年明けも大して変わらないだろうに。

ヨシ、
ここは一つガツンと言ってやらねばなるまい。

"彼"は鷹揚な動作で受話器を取った。

「ハイ、もしもし○建築設計事務所でございます。
あ、いつもお世話になっておりますぅ。
え、ハイ、ハイ、
只今外出しておりまして、
申し訳ございません。
戻りましたらスグ折り返し電話させますので、
ハイ、どうぞよろしくお願いします~。」

ふぅ、
やはり相手につけ入る隙を与えてはダメだ。

挨拶から流れるように不在をハッキリ伝え、
とっとと切る。

伝言は面倒臭いのでなるべく聞かない。

これに限る。


。。。。。。。。


・・・
マウスを走らせ続け約10時間程経ったろうか。

ふと視線を感じ、顔を上げる。

「・・・お客さんとこパースも持っていきたい。」

・・・・・・!!!!!!


「ナニ、ソレ」

あまりの衝撃に
ロボットのような口調になってしまう。

・・・もちろんロボットが
実際に喋っているトコロなど見たコトないが・・・。


「うん、簡単なのでイイから。」


・・・今"彼"が話している相手は、
鬼なのだろうか・・・。


パースとは立体図のコトだが
『簡単』に描けるような代物ではない。

少なくとも客に見せるとなれば、
それなりの質は確保したい。

しかもさっきの電話は構造屋からの
結構重要な連絡で、
図面の直しが発生していた。

もちろんアッサリ切らずに、
その場で話を聞いておけばよかった、
などという後悔は"彼"には微塵もない。

後は振り返らないのだ。

・・・特に都合の悪いコトは・・・。


が、
やはり測ったように
最後にヤマ場がくるのは宿命のようだ。


同じ女は二度と抱かないのが
"彼"の信条だが、(というより相手にしてくれない)、
"レイジ"と"テツヤ"とは
幾晩一緒に過ごしているだろうか。

既にホラレていても不思議ではない程だ。



・・・死んでも絶対イヤだが・・・。



・・・
明日の朝にはこのヤマもケリがつく。

"彼"はそう思い、
ケツを抑えていた手を
マウスに戻すのだった・・・。




・・・人々は身を切るような北風に足をはやめ、
街は暮れの匂いにざわめきはじめていた・・・。

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