第三夜-誤算-

“彼”の信条は
「科学で証明できないことは信用しない」
である。

物事は全て
科学的証明、
論理的説明で
立証されるべきであり
それ以外のものは
‘まだ’検証されていないだけ
というのが持論である。

しかし今目の前にある現実は
どう考えても
科学的アプローチが不可能であり
事実の積み重ねから解明するのは
困難な状況であった。


・・・フーッ・・・


“彼”はひとつ大きく深呼吸をすると
この複雑に絡み合い
互いに干渉しつつ
最悪の方向へひた走る状況を把握しようと
ささやかな努力を始めた。


まさかあんとき寝ちゃったのが
イケなかったんじゃ・・・



“彼”の脳裏に禁断の二文字が浮かび上がる。


-後悔-


いや、そんなハズはない。

あのときは
アレしか方法がなかったのだ。

全体を素早く把握し
全ての状況から分析され導き出された
絶妙なタイミングでの
現実逃避・・・、ではなくて休息。

アレがなければ今頃とうに力尽き、
地に這いつくばり苦渋を舐めていただろう。


だが
未だ窮地に立たされていることに
変わりはない。

すでに運命は“彼”の手にに委ねられている。

『行動』だけがこの状況を打破出来、
『怠惰』は最悪の選択肢だ。


しかしながら
人とはそうと分かっていても
実行出来ない弱い生き物である。

“彼”もまた迷えるか弱き子羊なれば
多少の挫折があっても
誰も責めることは出来ない。



・・・と、
またまたアタマの中で
なんとかサボる口実をこね回していると
時計の針が上向きでピタリと重なっていた。


げっ、もう次の日かよっ!


時の流れは
“彼”に妄想を膨らませるヒマも与えてはくれない。


テレビでスポーツニュースを観たいのをグッと堪る。

-どうせ巨人は今日も負けたに決まっている-

とは言っても
Yahooニュースには目を通し、
嫌々仕事に戻る。


事実を詳細に理解する分析力と
物事を広範に判断する想像力を駆使し
仕事を矢継ぎ早に処理していく。


「うむぅ、
コイツをどう思うかね、ワトンソ君」



最近PCに話し掛けることが増えた・・・。


そんな寂しい事実はいいとして、
もうこのヤマもそろそろ終盤だ。

“彼”は使い古したデスクにそっと肘をつき
絞り出すように溜め息を吐き出すと
かすかに口元を歪めた。

「なぞは、全て解けた!
じっちゃんの名に賭けて!」



-ちなみに“彼”のじっちゃんはタダの本屋だった-


そう高らかに宣言すると
“彼”はおもむろに布団に潜り込むのだった。





季節の変わり目に
街も人もざわめきたち、
外から聞こえる虫の音だけが
初夏の到来を告げていた・・・。

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