第一夜-狼狽-

「あ、ここスパン変わったから」

そう言われたのは
もう既に大半の図面が出来上がった後だった。

細かい食い違いなどのチェックをし、
‘人様向け’に編集している時だ。


ここで言う『スパン』とは
柱同士の距離のことである。

柱間が空けば
当然、柱自体の太さや
梁の太さも変わってくる。

場合によっては
間仕切壁や
窓やドアなど建具の位置などにも
影響してくる。

つまり建物の
構造そのものが変わってくるのだ。

要するに

「それって、全然別の建物じゃね?」

ということである。


CADで描く図面は
基本となる平面図を描き
それが完成したのち
その図面を細かく分割したり
元にして詳細図を起こしていく。

すなわち
完成間際での
図面計画が変更とは
設計図全ての描き直しということだ。


「うそ~ん!」


“彼”のタマシイの叫びが響き渡るなか
「変わったものは仕方がない」
という圧倒的事実の前には
『現実』という名の急流に翻弄され
水面を漂う枯れ葉のごとく成す術がなかった。

急峻な流れに運ばれ辿り着くその先に
未だ見えぬ激流と
回避不可能な大瀑布が
待ち構えていることを
このときの“彼”には
まだ知る由もなかった。




変わりゆく季節の休息日に
人々は精一杯の鋭気を養い、
明日への活力を蓄えていた・・・。

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